やさしさの精神病理
こんにちは。
久々に本を1冊読みました。
やさしさの精神病理−大平健著
- 作者: 大平健
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1995/09/20
- メディア: 新書
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「大人ってわかっていないみたいだけど
親から小遣いをもらってあげるのも
すきでもなくても結婚してあげるのも
電車で老人に席を譲ってあげないのも
質問に黙り込んで返事をしないでいるのも
みんな私たちがやさしいから。」(帯から)
今、旧来の「やさしさ」とは異なる若者たちの新しい”やさしさ”が現れてきている、
悩みを抱えて精神科を訪れる"患者"達を通して、"やさしい関係"にひたすらこだわる現代の若者たちの心を読み解き、時代の側面に光を当てる。
親は見栄で子供に小遣いを渡しているので、黙ってもらってあげるのが"やさしさ"なんだとか・・・
座りたいとも言ってなくて、年寄り扱いされるのが嫌かもしれない老人に席を譲らないのが"やさしさ"なんだとか・・・
反省してるのに「何で黙ってるんだ!」という上司に、口をきけば上司の理解力のなさを指摘するのに等しくなるから黙ってあげてるのが"やさしさ"なのにわかってない、とか・・・
これらが新しい"やさしさ"の一部です。
この"やさしさ"とは、ひとづきあいの技能のことなのだといいます。
だから、やさしくするためには土足で人の気持ちに踏み込むことはあってはいけないのです。
そんな人は"やさしく"ない人なのだと、若者たちは一応に言うのだとか。
旧来の「やさしさ」は気持ちと気持ちのふれあいの中で暗黙に了解しあい、言葉に出してぶつかりもする「ホット」な人達だとか。
今の"やさしい"関係は、じゃあ「クール」なのかというとそうではありません。冷たいとか冷静な関係でもないのです。
ある子はそれを、”ウォーム”と表現したそうです。
なので、彼らは自分自身も「傷つく」ことをおそれ、決断しないといけないところも、失敗を恐れて「決断」しません。
1995年の発行なので、ポケベルが「絆」として出てくるとか古い感じは否めません。
だけど、"患者"とカウンセリングの場面は対話式に書かれており、臨場感に溢れてます。
非常に興味深い内容で一気に読めました。
よければ一読ください。